離婚の公正証書に書けないことは?自分で作成するデメリットは?

『離婚の公正証書は自分でも作成できますか?』と聞かれることが多くあります。答えとしては、離婚の公正証書はご自身でも作成できます。ご自身で公証役場に連絡して案文を作成し、二人で公証役場に行けば作成できます。その分、行政書士などの専門家に依頼する費用を払わなくて済みます。行政書士などの専門家に依頼して離婚の公正証書を作成する場合と、ご自身で作成する場合の違いをご紹介します。(あくまで当事務所の考えです)

 

公正証書には書けないことが意外と多い

まず最初にご紹介したいことは「公正証書には何でも書けるわけではない」ということです。

  • 養育費を払わない(再婚したら養育費を払わない)
  • 年金分割をしない
  • ○○したら親権を渡す
  • いまの名字を名乗らない(または名乗り続ける)
  • 再婚しない

などは基本的に公正証書に書けないと知っていましたか?

詳しい説明は省きますが、公正証書には書けないことがたくさんあります。そして、同じ内容でも、公証人によって書いてくれたり、書いてくれないこともあります。公証役場は全国にありますが、公証人がすべて同じ考えで、同じ書き方をしてくれるわけではありません。意外と違いがあります。

ご自身で作成する場合、公証人からこれは書けないと言われたとき、それが当たり前のことなのか、特殊なことなのか判断できないと思います。

離婚の公正証書を何度も作成している行政書士などであれば、それが判断できます。なにより、同じ公証人に頼むので、過去に公正証書に書いた内容は書けます。また、書き方を工夫することで、同じような内容を記載できることもあります。

 

公証人は公平な立場です

公証人に内容を相談したとき、それはこういう感じで書きます、それを書くならこういうことも追加するのが一般的です、それは書けませんなど記載内容のアドバイスはしてくれます。しかし、公平な立場なので、どちらか一方に有利ですよ、不利ですよ、というアドバイスは基本的にしてくれません。(感想程度で言う方はいます)

例えば、両親の年収を聞いて、それなら養育費の金額は算定表より低いですね!などは教えてくれません。(絶対に教えてくれないというわけではありませんが、そういう役目ではありません)

もちろん、養育費は金額だけではありません。何歳まで払われるか、払い方、払われなくなったときにどうなるかも大事なのです。当事務所では「子供の幸せを最優先に考える離婚」をテーマに、お子様にとってどういう内容が理想か、をアドバイスしています。例えば、養育費の年齢で一番多いのは22歳のあとの3月までです。

 

よくある微妙な項目

他にも、公正証書には書けても微妙な内容をご紹介します。

【養育費の金額】

・父親の収入の◯%

→ 父親の収入をどうやって知るのか。本人が、今月から給料は10万円です、と言ったら、それで納得できるか。給料明細や源泉徴収を見せるとは思えません。また公正証書による強制執行もできません。

・養育費は月に◯万円とする。ただし、父親の経済状況で増減する。

→ 父親が今月はお金ない、と言ったら、ゼロ円になってもいいのか…。

【養育費の払い方】

・毎月、面会時に支払う

→ 子供が体調不良で面会できなかったら、養育費は受け取れないのか…。

・書いていない

→ 本人は、毎月、手渡しのつもりかも。毎月、ATMで振り込む、というのもオススメしない。忘れたり、遅れたり、勝手な事情で安くされることが多い。

【養育費の時期】

・子供が高校卒業までは支払う。その後は卒業までに協議する。

→ 子供が一生懸命に勉強しても、協議の結果、「お金ない。就職しろ」となる可能性がある。協議する、は約束しないことに等しい。

【退職金】

・退職金の◯%を支払う

→ その金額は、どうやって知るのか。懲戒免職(懲戒解雇)になった場合はどうするのか。

【再婚】

・母親が再婚したら、養育費について協議する

→ 再婚したことをどうやって知るのか。再婚したと報告する義務はない。

【面会】

・父親の希望したときに面会できる

→ 毎日会いたいと言われたら?

【生命保険・学資保険】

・父親は生命保険を解約しない

→ 解約したらどうなるの?解約したことを知る方法はあるの?いつまで?

などなど、トラブルの元になりそうな条項を希望されるケースは珍しくありません。この他にも、たくさんあります。

 

公正証書を作ることが目的ではありません

当事務所が最も重要だと思うことは「公正証書を作ることが目的ではない」ということです。

公正証書を自分で作る方法は、検索すればいくらでも探せると思います。しかし、公正証書を作っても養育費が不払いになったら何ができるか、そうならないためになにができるか、を理解することは非常に難しいです。強制執行ができる、と簡単に書いていますが、それにいくらかかるか、どういうデメリットがあるか、などです。

公正証書を作れば、絶対に最後まで養育費が受け取れるわけではありません。どういうときに受け取れなくなるか、どういうリスクがあるか、再婚したときにどうなるか、などを知っておくことが重要なのです。当事務所では養育費保証サービスや学資保険のことなど、公正証書以外にどんな方法があるかもアドバイスしています。

公正証書を作ることではなく、お子様の利益を最大化することが目的です。専門家に依頼する一番のメリットは、内容が違う、ということだと思います。

 

養育費が高額になるほど、児童扶養手当が減額されてしまう

過去に「慰謝料と書くと夫が怒りそうなので、養育費に上乗せして書いてください」という方がいました。

シングルマザー(ファザー)に支給される児童扶養手当。所得に応じて、子供がひとりの場合、最大で月に約4万3160円が支給されます。が、ここで気をつけて欲しいのが、「養育費の8割は母親の所得として計算される」ということです。仮に対象の子供がひとりで、所得が100万円で養育費が月額5万円と月額10万円で、児童扶養手当は毎月1万円以上、違います。(87万円は控除額)

月額5万円の場合:
4万3150円-(100+(5✕12✕0.8)万円–87万円)×0.0230559= 2万9090円

月額10万円の場合:
4万3150円-(100+(10✕12✕0.8)万円–87万円)×0.0230559= 1万8020円

つまり、慰謝料を養育費と書いてしまうと、年間で12万円以上を損するかもしれない、ということです。

※子供1人の場合。単純に名目だけで決まるわけではありません。

専門家に相談することで、こうした可能性(リスク)を事前に知ることができます。もちろん、知った上で、それでもいい、ということでも構いません。

 

まとめ

離婚の公正証書は自分でも作成できますが、公正証書を作成することが目的ではありません。養育費を最後まで、安心して受け取ることが目的です。その他、児童扶養手当などに関係することがあります。まずは依頼するかは別として、専門家に相談されることをオススメします。

 

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