不倫の示談書を公正証書にする割合は?デメリットは?拒否できる?

結論から書くと、不倫の示談書を公正証書にすることは可能です。ただし、作成には相手の同意が必要なため、相手から作成を断られる可能性もあります。不倫の示談書を公正証書にするデメリットやポイントをご紹介します。

 

相手が公正証書に応じる義務はない

不倫されたとき、不倫の示談書(和解書)を公正証書にした方がいい…という意見があります。公正証書にする主なメリットは…

  • 慰謝料の分割払いで不払いが起きたときに強制執行できる(条件あり)
  • 公正証書にすることで書類の不備が減らせる
  • 公正証書にすることで書類を紛失しても困らない(再交付できる)
  • 公正証書にすることでしっかり不倫した証拠を残せる

などがあると思います。特に、専門家のサイトでは「慰謝料が分割払いになるなら公正証書を作成しておいた方がいい」と書かれていることが多いですよね。

ただ、不倫相手は公正証書の作成に応じる義務はありません。同様に、和解書の中の「二度と夫や妻と連絡しない、連絡したら違約金を支払う」という項目に応じる義務もありません

不倫相手は奥様(ご主人)に不倫の慰謝料を支払う義務(不法行為により生じた精神的苦痛に対する損害賠償の支払義務)しかない、と考えておくと無難です。

まずはこの点をしっかり理解しておくことが重要です。当たり前のように上記が可能だと考えていると、不倫相手から「慰謝料は払いますが、それ以外はすべて拒否します」…と言われたときに非常に腹立たしいですよね。

 

不倫の示談書を公正証書にするデメリット

不倫相手が和解書を公正証書にすることを拒否してくる可能性があることを踏まえて、それでも公正証書にするときのデメリットをご紹介します。

原則、相手と会う必要がある

公正証書にするためには当事者の二人が公証役場に行き、一緒に公正証書を作成することになります。普通に考えると顔を合わせたくないと思います。委任状を作成して、双方とも、どちらかが代理人に任せることも可能です。ただ、請求する側はそれでよくても、支払う側(不倫相手)は安くない費用を払ってまで代理人に依頼して公正証書の作成に協力してくれるでしょうか…。もし、公正証書にする理由が慰謝料の分割払いであれば、代理人に依頼するお金の捻出も難しいと思います。不倫相手は自分で出席すればいいだけとも言えますが…。

労力と時間がかかる

ご自身で公正証書にする場合、当日だけではなく、事前に公証人(公証役場)との打ち合わせも必要です。専門家に依頼するにしても、事情を話して依頼して、注意事項を理解して…とそれなりに労力と時間がかかります。

相手がドタキャンするかもしれない

「不倫相手も示談書を公正証書にすることに同意しています」という相談もありますが、いまは不倫相手が同意していても、当日になって公証役場に来ないこともあります。裁判などと違って、それでも相手は基本的にあまり困りません。公的なペナルティはほぼありません。(ドタキャンに対して多少の損害賠償請求はできるかも。それでも体調不良ですと言われたら…)

公正証書にすると書けない可能性がある

個人間で取り交わす示談書は誰かがチェックするわけではないので、自由に記載することができます。(逆にいうと、不備があってもその時点では分かりません)

公正証書にする場合は公証人のチェックが入るので、この項目は書けません、と言われてしまう可能性があります。どんな項目が公正証書に書けて、どんな項目が書けないかは、非常に曖昧というか、難しいです。それは同じ内容でも、ある公証人はOKしてくれて、違う公証人だとNGというケースがとても多いためです。これはもう公正証書の作成をたくさん経験してみれば心から理解できます…。

※ 公証人の良し悪しではなくて、考え方の違いです。

拒否してくるだけでなく、和解そのものがリセットされる可能性もある

せっかく相手が慰謝料の支払いに応じてくれたのに、公正証書の作成を求めることで「そうしたことを求められると不安なので、すべて白紙に戻して弁護士さんに依頼させて頂きます…」と話し合いが最初からになってしまう可能性もあります。そんなのおかしい!とは思うかもしれませんが、そうすることも相手の自由ではあります。

強制執行するにもお金がかかる

公正証書が作成できて、慰謝料の分割払いが不払いになって、やっと相手の給料や預金を強制執行しよう!となっても、やはり労力がかかります。弁護士さんに依頼すれば費用もかかります。

強制執行できるのは主にお金だけ

強制執行とは主に、お金の不払いがおきたときに給料や貯金や財産を差し押さえることが比較的簡単にできる…ということです。「夫と不倫を解消する」「二度と夫に会わない」などの行動の約束は、公正証書にしたからといって誰かが何かしてくれるわけではありません。また、強制執行するためには支払期限が明確になっている必要があるので、「また夫と不倫したら違約金100万円を支払う」というような内容は強制執行ができません。また夫と不倫したかどうかは当然には分からないためです。あくまで、また不倫した証拠とその公正証書をもとに違約金が請求できるだけです。普通の示談書と同じ流れになります。「公正証書にしておけば違約金がすぐに強制執行できる」と誤解されている人も多いように感じます。

※ 相手と違約金〇万円をいつまで支払うという内容の強制執行認諾付きの公正証書を新しく作成して、それで不履行が起きたら強制執行はできます。不倫の示談書の中の「将来、もしまた不倫したら違約金〇万円を支払う」という内容ではできない、という意味です。

 

そもそも、公正証書にする必要がありますか…?

ここまで読んで頂ければ、不倫の示談書を公正証書にするためには不倫相手の多大な協力が必要ということがご理解いただけたと思います。

極端にいえば、最初から慰謝料の支払いを踏み倒すつもりであれば、公正証書の作成に協力しないと思います。(もちろん、それ以上のメリットがあれば別ですが…)

また、公正証書を作成するほどの労力や時間や費用をかけるのであれば、不倫相手は銀行や消費者金融からお金を借りて、一括で慰謝料を払った方が安くて早いと思います。

ここでポイントになるのが冒頭に書いた公正証書にする目的が「慰謝料の分割払いの不払いに備えるため」なのか「それ以外」なのか、です。

「慰謝料が分割払いになるなら公正証書にした方がいいという意見がある」と紹介しましたが、分割払いの不払いに備えるために公正証書を作成するくらいなら、銀行から借りて一括で払った方が不倫相手は楽だと思います。「理由があってどうしても銀行などから借りられない」という人はそもそも公正証書にしても差し押さえる財産がない気がします。

しかし、慰謝料の分割払いの不払いに備えることが目的ではなく、「しっかり不倫した証拠と違約金の約束を公正証書という形で残したい」という目的であれば、浮気された側にとって公正証書にするメリットがあると思います。

ただ、繰り返し書いていますが、不倫の示談書を公正証書することは、不倫した側にもメリットがないと協力してくれない可能性が高いです。不倫相手のメリットとはなんでしょうか。

「慰謝料を請求しないor安くする代わりに、しっかりとした和解書(合意書)を公正証書にしましょう」ということであれば、不倫した側のメリットも大きいので、公正証書の作成に協力してくれるかもしれません。もし、それで公正証書の作成を断られた場合には、普通に慰謝料を請求するだけです。

相場以上の慰謝料も欲しいし、示談書も公正証書にしたい…というのは、なかなか難しいかもしれません。

不倫の示談書を公正証書にするだけでも、これだけ目的や優先順位を明確にしたり、権利義務やリスクやデメリットを理解しておくことが推奨されます。

 

不倫の示談書を公正証書にする割合

以上のような理由から、当事務所では不倫の示談書を公正証書にする割合はほとんどゼロに近いです。公証役場に行く場合でも、公正証書ではなく、「私署証書の認証」という形をオススメしています。

 

不倫の示談書を公正証書にするときの費用

公正証書の費用は、記載する慰謝料の金額や枚数によって決まります。だいたい7千円から2万円くらいでイメージしておくと大丈夫だと思います。交付送達するかなどにもよります。

私署証書の認証の費用は数千円から1万円程度が多いと思います。

 

コラム:専門家に相談したら、微妙な対応をされた…?

「専門家に浮気の示談書や誓約書を公正証書にしたいと相談したら微妙な対応をされた」というような相談をいただくことがあります。

もちろん、不倫の示談書を公正証書にした方がいいですよ!という専門家もいると思いますが、逆に、あまりおススメしない専門家もいます。それは上記のような理由だと思います。ただ、ここに書いたような内容をすべて説明するのは大変ですよね…。このため、「公正証書にできないことはないですけど…」のような感じの対応になったのかもしれません。

 

不倫の示談書を公正証書にする?のまとめ

不倫の示談書を公正証書にする注意点などをご紹介しました。色々とネガティブなことを書きましたが、「可能な限り、不倫の事実をしっかり残したいので公正証書にしたい」というお気持ちも理解できます。実際に公正証書にする方もいます。ただ、あとで後悔しないためにも、よく知った上で判断して欲しいなと思います。

例えば、当事務所では「慰謝料は請求せずに、二度と夫や妻に連絡しない、したら違約金を支払う」というような合意書を作成することもあります。

詳しくは【慰謝料請求しない解決方法とは?浮気相手に念書を書かせる

当事務所では「浮気されても離婚しない」をテーマに、慰謝料請求書や示談書、和解書、合意書、誓約書などの書類を作成しています。

お子様のため、結婚を祝福してくれた両親や友人のため、さまざま理由により配偶者に浮気されても離婚を希望しない女性や男性を応援しています。離婚で悲しむ人が少しでも減るためのお手伝いができれば幸いです。

 

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※ 相手の住所が分からなくても相談OKです

※ 探偵に依頼して得た証拠などがなくても、配偶者が肉体関係を認めていれば請求できます