離婚で夫名義の家に住むと児童扶養手当が貰えない?

『元旦那名義のマイホームに住み続け、住宅ローンは元旦那が支払う条件で離婚しました。そして先日、区役所に児童扶養手当の申請に行くと、元夫から扶養を受けていることを理由に、児童扶養手当が支給できない可能性があると言われてしまいました…。』

 

児童扶養手当の申請時、家の名義を確認されます

一般的に、児童扶養手当を申請するときに家の名義を確認され、賃貸の場合は賃貸借契約書などが必要となります。これは、偽装離婚による不正受給を防止するためです。夫と暮らしているのに、離婚届だけ出して手当を貰おう、ということを防ぐためです。元夫名義の家に住み続ける場合も同様です。

 

児童扶養手当の金額は?

まずは児童扶養手当の金額について、簡単にご説明します。子供がひとりの場合、最大で月に約4万5千円くらいが支給されます。

この金額は、母親の所得+色々で決まります。母親の所得が高くなるほど、児童扶養手当は減額、もしくはゼロになります。そして、この計算では働いて稼いだ給料などに加えて、元夫からの養育費の8割が計算に含まれる、というのがポイントです。

児童扶養手当の詳しい説明は【児童扶養手当で知っておくべきこと

 

児童扶養手当での養育費とは?

この養育費について、札幌市のホームページには詳しく書かれていません。ネット検索して、たまたまヒットした千葉県市川市のホームページにはこう書かれています。

別れた父又は母からの養育費は、児童の養育のために支払われるものであり、児童扶養手当とその目的が一部重なっています。このため、別れた父又は母から受け取った養育費の8割相当額を、所得制限を行う際に加算する形で調整しております。

養育費とは、次の要件にすべて当てはまるものをいいます。(中略)

養育費、仕送り、生活費、自宅などローンの肩代わり家賃、光熱費、教育費など児童の養育に関係のある経費として支払われていること

引用元:千葉県市川市

※公正証書に書く養育費=児童扶養手当に関する養育費のように書かれているサイトもあるので注意が必要です

 

元夫からの扶養とは

例えば、元夫から養育費として月に50万円をもらっているとしたら、お金に困っていないので、児童扶養手当は支給しませんよ、という趣旨は理解しやすいと思います。

では、これが養育費の代わりに家賃相場10万円の家に無償で住まわせている、という場合はどうなるでしょうか?

元夫が家賃(ローン)を支払っているのだから、その分の扶養を受けている、養育費に含まれる、と考えられる可能性があります。この場合、受給される児童扶養手当が減額される可能性があります(もしくは受け取れません)

ただ、夫名義の家に住む=児童扶養手当が受け取れない、というわけではありませんまずはお住まいの市区町村役場にご相談されることをオススメします

最近の札幌市の場合、元夫名義の家に住み続けても児童扶養手当に影響しない、と区役所に電話して言われた、という方が多いです。これは住宅ローンの支払いは資産形成の側面もあるためだと思われます。

 

元夫と賃貸契約を交わせばOK!?

では、『この家を月千円で元夫から借り受けているだけです。月千円で家を借りている証拠として、不動産賃貸契約書があります!』という主張は通るでしょうか??

おそらく、制度の趣旨から考えて、かなり難しいでしょう。ちなみにローンの毎月の支払額=毎月の扶養されている金額、ではありません。ローンの毎月の支払金額は、自分たちで決められる金額であるためです。近隣の家賃相場、もしくは母子世帯の平均的な家賃相場から計算される可能性が高いと思います。

 

慰謝料の代わりに住み続ける場合は!?

『慰謝料は払えないけど、この家に住み続けていい。ローンは俺が払うから…』という場合、どうでしょう?

児童扶養手当を算定するときの所得に、慰謝料は含まれません

したがって、次のようなものは養育費に含まれません。(中略)

5.慰謝料、財産分与として支払われる場合

引用元:市川市ホームページ

このため、家賃分は慰謝料の支払い分と相殺しています!という主張は、もしかしたら、通るかもしれません。ただし、家賃が10万円の場合、年間120万円です。仮に10年続けるとすれば、1200万円です。慰謝料の相場としては現実的でないと判断される気がします。

 

ポイントは財産分与

ご主人名義の家に住み続けて、できるだけ児童扶養手当を受け取りたい場合、最も現実的なケースは、財産分与として考える、ことだと思います。

家の名義がご主人であっても、結婚後に取得した家の場合、それは共有の財産ですので、奥さまの財産でもあります。そこで、数年後にその権利をご主人に譲渡する代わりに、それまで、奥さんと子供が住み続ける、というような内容の離婚協議書になっていれば、扶養ではなく、財産分与の一部なので、児童扶養手当には関係ない、とされたケースもあります。

例えば、3千万円の家を買って、その家はいま2千万円で売れるとします。ローンはありません。普通に売却して財産分与をすれば、お互いに1千万円の現金が貰えるはずです。妻がその家に15年間、住んで、その代わり15年後に家の権利をすべて放棄、元夫に渡すという財産分与の方法をとった場合、養育費ではありませんよね。ちなみにローンがあっても同じです。

実際に、こうした主張が認められたケースもあります。ただ、すべてのケースが必ず認められる話ではないので、詳しい専門家に相談し、適切な離婚協議書を作成することをオススメします。

ちなみに、離婚後でも離婚協議書は作成できます。もし、離婚後にこうした理由で児童扶養手当が支給されない場合は、新たに離婚協議書を作成してみてはいかがでしょうか。

 

同居していると誤解されるケース

離婚届を出しても、元夫と一緒に住んでいる場合は基本的に児童扶養手当を受け取れません。これは当然ですよね。ただ、実際に元夫と別居している場合でも、夫名義の家に住み続ける場合「本当はまだ夫と住んでいるんじゃないの?」と思われる可能性が高くなります。

もし、夫名義の家に住むことで児童扶養手当が貰えないかも、と言われたときは「事実婚状態だからダメ」なのか「家賃分の扶養をカウントされ所得制限を超えたからダメ」なのか、ハッキリ確認した方が良いかもしれません。

 

誤解されないように…

過去にあったケースをご紹介します。

養育費が4万円、毎月の住宅ローンの支払いが6万円。夫名義の家に妻と子供が住む。このとき、奥様は夫が本当に毎月銀行にローンを返済しているか不安なので、一度、元夫から自分に10万円を振り込んでもらい、自分で銀行に毎月6万円を振り込みたい、ということがありました。

気持ちはわかります。確かに、本当にちゃんと元夫がローンを支払わないと、奥様と子供が困りますもんね。

でも、これは危険です。役所からみたら、養育費を10万円受け取っているようにしか思えないからです。10万円全額が養育費として計算されて、児童扶養手当が減額されてしまう可能性があります。

 

持ち家でも金額は一緒…

ちなみに、奥様名義の持ち家に住んでいても、家賃を払って賃貸アパートに住んでいても、児童扶養手当の金額は一緒です。ちょっと不思議ですよね…。

だったら、住宅ローンを元夫が払っている家に住んでも同じでいいじゃん、と思いますよね。

 

元夫の住民票にも注意

また、元ご主人の住民票についても注意が必要です。元夫の住民票を変更しないと、児童扶養手当が受け取れない可能性があります。

次のいずれかに該当する場合は、支給されません

住民票上、同一住所にあること(世帯分離を含む)
住民票上同一住所でなくても、同居している実態があること
同居していなくても、定期的な訪問かつ経済的な援助があること

引用元:安堵町 児童扶養手当のご案内

奥様が持ち家に住み続ける場合、奥様とお子様の住民票の住所は現在と同じです。元夫は別の場所で暮らしているので、元夫が転居届を出さなくてはなりません。ただ、離婚届を出しても、自動的にご主人の住民票の住所が変わるわけではありません。ご主人が転居届を出す必要があります。しかし、元夫がなにもしてくれない、という相談が多くあります。

法律上、引っ越してから14日以内に転居届(転出届、転入届)を出す義務があります。違反した場合、5万円以下の過料を科せられるとの罰則もあります。

児童扶養手当を受け取る予定がある場合には、離婚届をいつ出す、公正証書をいつ作る、かは別として、別居したとき(戻ってくる予定がない)には住民票を移す(転居届を出す)ということを速やかに行っておくことがオススメです。

ちなみに、転居届は本人以外でも同居している家族は出せるそうです。

代理の可否 可能。委任状が必要。 (本人と同じ世帯の方は必要ありません

引用元:札幌市 転入・転居届

ただ、あくまで手続きの話なので、しっかりご主人の承諾を得てから行ってくださいね。

 

住宅ローンの関係で元夫の住民票を移せない場合は?

夫の家に住み続ける場合の懸念として、住宅ローンをどうするか、ということを聞かれます。

厚生労働省のホームページに以下が書かれています。

(問4)離婚後、元夫は実際には居住していないが、住宅ローンの支払のために住民票を移動していない。また、住宅ローンは実際に元夫が負担している。この場合、事実婚となるのか。

(答)現地調査や、元夫の住居に係る賃貸借契約書等により、元夫が受給資格者と同居していないことが確認できる場合には、事実婚状態にあるとは言えない。なお、事実婚は、原則として同居していることを要件としているが、頻繁に定期的な訪問があり、かつ、定期的な生計費の補助を受けている場合には、同居していなくとも成立すると取り扱っていることに留意する必要がある。

引用元:厚生労働省 児童扶養手当の取扱いに関する留意事項について(平成27年)

ポイントは2つです。

1,元夫が住宅ローンを負担している=事実婚、ではない、つまり児童扶養手当は受け取れる

タイトルの疑問ですが、持ち家に住み続ける&住宅ローンを元夫が負担する=児童扶養手当は受け取れない、ということではないと書いてありますね。

2,元夫が住民票を移動していない=事実婚、ではない、つまり児童扶養手当は受け取れる

元夫が住民票を移動していない=児童扶養手当がダメ、ということではないと書いてありますね。あれ、さっき書いてあることと違う!と思いますよね。そうなんです。制度をどう解釈するかは、とっても微妙なのです。市町村によっても異なりますし、同じ役所でも職員によって違うことを言われた、という相談もあります。それは行政や職員が悪い、ということではなくて、事情はそれぞれ個別に違いますし、同じ事情でも質問の仕方によって答えも変わるためです。解釈が変わったのかもしれません。情報が古いのかもしれません。このため、インターネットでこう書いてあった、ということを過剰に信じないことをオススメします。ご自身でお住まいの役所に聞くのが一番、確実です。そして、もし疑問(不満)があれば、何度でも相談することがオススメです。

話が逸れました。そもそも「住宅ローンの支払のために住民票を移動していない」という行動が謎ですよね。法律上、住所を変更した場合は、住民票も変更しなければなりません。おそらく、インターネットで「離婚したら住宅ローンの一括返済を求められる!(から売りなさい)」という情報を読んだためだと思います。結論としては、正直にローン元に相談して、住民票は移動するしかありません。

詳しくは【離婚しても持ち家に住み続けた方がお得】をご覧くださいね。

 

住宅ローンがある場合、ローン元に相談する必要があります

住宅ローンがあり、所有者(名義人)であるご主人がその家から引っ越す場合、必ずローン元に相談(報告)する必要があります。その中で、一括返済が求められるケースがあるそうです。経験上、一括返済を求められた方は過去にいませんが、可能性がゼロなわけではありません。ご注意ください。

なお、法律が改正され、所有者の住所が変更した場合、住所の登記変更が義務化されました。ご注意ください。

 

子供の幸せを最優先に考える離婚

行政書士札幌中央法務事務所では「子供の幸せを最優先に考える離婚&公正証書」をテーマに、児童扶養手当や養育費など、離婚後にお子様の経済的な不安をできるだけ減らすことを目的とした書類(離婚協議書や公正証書案)の作成を得意としています。メールやLINEで24時間、無料でご相談頂けます。書類作成の面談は2時間まで無料です。どうぞお気軽にご相談くださいね。

 

全国からご依頼いただけるようになりました

これまでご依頼は会って面談できる方だけに限定してきましたが、国、どこにお住まいの方でも離婚協議書(公正証書案)の作成をご依頼いただけるようになりました。LINEのテキストや無料通話などで面談し、郵送で対応しています。どうぞお気軽にご相談くださいね。