夫から養育費の内訳を出せ!と言われたら

夫との離婚の話し合いの中で「養育費を払ってもいいが、内訳を出せ」や「お前は信用できなから養育費は直接、子供の口座に振り込む」と言われた、という相談があります。

 

養育費の内訳を出す必要はない

基本的に養育費の内訳(使い道)を父親に提示する義務はありません

養育費の金額はおおむね、算定表に基づいて決めていると思います。この算定表は日本の家庭の標準的な家賃や食費、光熱費、被服費など、両親の収入や子供の人数や年齢に応じて計算式を作り、それに応じて10円単位で算出できるものです。

そして、この金額には塾代や習い事、娯楽のための費用も含まれています。貯金してはダメ、という決まりもありません。例えば子供が幼い場合、将来の進学費用のために貯金している(したい)人は多いと思います。

このため、この金額の中であれば、その内訳がどうであれ、親権者が子供ために自由に使える(貯められる)ものと考えられています。養育費は子どもの権利であり、それは親権者である母親が子どものために使うお金です。

もちろん、養育費が適切に使われているか知りたいという父親の気持ちも理解できます。あくまで任意で、内訳を聞いたり、教えたりすることがダメなわけではありません。ただ「内訳を出さないなら養育費を払わない」ということは認められないでしょう。

ちなみに、養育費の内訳を提示すれば、算定表以上の金額が受け取れるのであれば、応じた方が得だと思います。

 

養育費の振込先を子どもにすることは可能

「養育費を子供に直接渡す(払う)ことはできますか?」と聞かれることがあります。

これは可能です。ただ、結局はその子供の口座から、母親の口座に送金することになると思います。例えば学校の給食費でも、習い事の費用でも、光熱費でも、母親の口座からの引き落としになりますよね。通常、未成年者と契約することはなく、親が契約者となり、引き落とし口座はその契約者本人の口座に限定されるためです。

子供の口座の方が、父親が気持ちよく払えるのであれば自由にしていいと思いますが、あまり意味はないと思います。

 

養育費の使い込みは罪になるか?

稀に父親から聞かれます。まずは「使い込み」がなにを指すかによると思います。例えば、養育費を受け取っていながら、子供を孤児院に入れて、子供のために1円も使っていなかったら、あとから不当利得として、養育費の返還を求められる可能性はあるのかもしれません。それでも、それが罪になるかというと、ならない可能性が高いようです。

有名なケースとしては、養育費を払っていたのに、実は元妻が再婚し、再婚相手と子供が養子縁組していた場合、養育費を払い過ぎたとして、一部を父親の返還するようにとの裁判例があります。

 

コラム:養育費算定表の金額

現在、専門家に離婚の相談をした場合も、インターネットで養育費について調べた場合も、簡単に養育費の目安を知ることができます。それは、「算定表」と呼ばれる、両親の年収、子供の年齢と人数によって、簡単に養育費の目安が分かる「表」があるためです。この算定表は、離婚に関する書籍だけでなく、実際の離婚調停や離婚裁判でも目安として用いられています。

※令和元年12月23日に発表された算定表はこちらです。

例えば、従来の算定表では、母親(年収100万円)と父親(年収600万円)で、15歳未満の子供がひとりの場合、標準的な養育費は4万円から6万円でした。※共に自営業でない

これが令和元年12月改定の算定表では6万円から8万円が目安になりました。おおまかに月2万円、年間で24万円増となります。

 

シングルマザーの生活

シングルマザーの貧困については、最近、ニュースでも頻繁に取り上げられているためここでは割愛しますが、日本は先進国で最低の水準です。

「母親でも働けばいい」

厚生労働省の(少し前の)調査によれば、母子家庭のうち、年収が125万円未満の家庭が48.2%です。子供を育てながら収入を得ることはとても大変です。残念ながら、フルタイムで働いても、男性の収入には遠く及ばない現状があります。

 

目安を超えた養育費を支払う父親

さて、少し話題を変えて、実際の離婚協議書の話をします。以前、二十代の父親(年収が360万円くらい)から、月に9万円の養育費を支払う、という離婚協議書の作成を依頼されました。この男性との会話が、とても印象に残っています。『ひとり暮らしになれば家賃も安くなるし、今と生活水準は変わりません』 と。

確かに、額面の平均月収が30万円と考えれば、月に9万円の養育費は、不可能ではありません。独身で月収20万円の方は珍しくないでしょう。ちなみに、この金額は、養育費の算定表の目安の、約3倍の金額でした。

 

父親の生活も大切です

もちろん、父親の生活も大切です。子供が憎いから高額な養育費を払わないのではなく、実際に支払える金額に限界がある、という方もたくさんいます。父親も将来が不安です。仕事がどうなる分からない、転職するかもしれない、再婚して新しい家庭を築くかもしれません。

 

養育費は減額できる

養育費は、公正証書などで決めると、絶対に変えられないと勘違いしている人がいます。そうではありません。養育費は、父親と母親の生活状況に応じて変更することができます。例えば、父親が失業したり、収入が大きく下がった場合や、母親が再婚した場合などです。語弊がありますが『払えないときは、払わなくて大丈夫』とも言えます。(ただし、手続きをした場合に限ります。一方的には変更できません)

 

養育費は本当に子供ために使われるのか?

養育費を払うことには納得しているが、本当に養育費が子供のために使われているのか確認できないのが不安、という方もいます。実際に養育費が母親のパチンコ代に使われてしまったケースもゼロではありません。そうした不安がある場合は、それを理由に養育費の金額を下げるのではなく、離婚協議書の中で工夫することで、リスクを下げることが出来ます。

例えば、

・養育費は毎月、◯万円支払う。これに加えて、学資保険料、医療保険料、塾代は父親が直接、振り込む

・部活動費、遠征費など特別な費用は、領収書などを提示された場合に限り支払う

・制服やランドセルなどは、お金ではなく、父親が購入して渡す、一緒に買いに行く

・毎年、年末調整など、所得が分かる資料を提示する

など、を書くことが可能です。なにも提案せずに、養育費をお前(母親)が使い込むかもしれないから払いたくない、と言ったところで、誰も理解してくれません。逆に、母親の立場で考えると、こうした提案をすることで、算定表以上の養育費や金銭的な支援が受け取れる可能性があります。

 

母親が再婚したら、どうなるか?

父親から「お前(母親)はどうせすぐ再婚するだろうから養育費を払わない!」と言われたという人もいます。もちろん、こんな理由で養育費を払わなくていいという話にはなりません。子供の権利なので。

もっとも、父親の立場で「元妻が再婚したら養育費はどうなるの?」と考えることは自然です。

母親(元妻)が再婚して、再婚相手と子供が養子縁組した場合、養育費の支払義務がなくなる可能性があります。(例外は、再婚しても再婚相手が子供を扶養しない、再婚相手の収入がまったくないなど)

こうしたとき「元妻の再婚を知る方法がない」という不安はあるかもしれません。そんなときに備えて、離婚協議書の中に「再婚した場合は知らせること」と書くことが可能です。

父親の意見を否定するだけでなく、一つ一つ丁寧に説明し、対策をしていくことで、円満に離婚協議ができます。

 

正しい知識が大切です

このように、正しい知識を得ることで、漠然とした不安を解消し、安心して養育費を支払ったり、子供のサポートをすることができます。ぜひ、お気軽にご相談くださいね。

 

離婚の前に知っておくべき100のこと

当事務所ではこれまでたくさんの離婚や不倫の相談に応じてきました。LINE登録は4千件以上です。これまでの経験や知識を「離婚の前に知っておくべき100のこと」としてまとめています。

書類作成の費用や当事務所のことはトップページの『子どもの幸せを最優先に考える離婚相談』をご覧くださいね。全国からご依頼いただけます。