養育費を払わない方法、逃げる方法とは?仕事を辞めるから養育費を払わない

インターネットで【養育費】と検索すると、予測ワードで【逃げる方法】【払わない方法】が出てきます。実際に検索してみると、いくつかの方法などが例示されています。このページでは養育費を払わない方法についてご紹介します。また、父親から仕事を辞めるから養育費を払わないと言われている場合についてもご紹介します。

 

仕事を辞めるのが一番

離婚協議書や公正証書の作成の中で父親(夫)側から『離婚したら仕事を辞めるかも…』『転職するからこんなに養育費は払えない(算定表の計算を安くしろ)』と言われてしまった、脅されているという母親からの相談があります。

基本的には、無職の父親から養育費を受け取るのはとても困難です。

父親が捨て身で、自分がどんなに苦労しても絶対に養育費を払いたくない、というのであれば働かないことが現実的だと思います。

 

判例的には無職でも養育費が請求できる

ただ、そう簡単な話ではありません。”潜在的稼働能力”という言葉があります。これは本当は働ける、もしくはもっと高収入で働けるはずの人が、本来はどのくらい稼ぐことができるか、ということです。

例えば、やむを得ない事情がないにも関わらず大きく収入が下がった場合、辞める前の年収を基準に婚姻費用を計算された、という事例があります。(大阪高等裁判所 平成22年3月3日) もちろん、こうしたケースが婚姻費用を払いたくないから転職した、とは限りません。たまたま希望の仕事が前より低賃金だっただけかもしれません。しかし、実際にこう判断される可能性があります。

潜在的にいくら稼ぐ能力があるかは、一般的に、職業、年齢、健康状態、学歴、経歴などに影響するそうです。もちろん、会社が倒産した場合などは仕方がないと判断される可能性が高いと思います。

これまで正社員で普通に働いていたのに、客観的にはやむを得ない事情がなく無職になった場合、従前の所得(年収)で養育費が算定される可能性があります。

ちょっと本題とは異なりますが、離婚して、自由になって、旅人になりたいという男性は要注意です。無職でも養育費が請求される可能性があります。

 

そうは言っても現実的には難しい

ただ、これはあくまでそうしたケースや可能性がある、というだけで、現実的にはなかなか難しいと思います。

仮に勝っても差し押さえる財産がない

仮に上記のように裁判などをして、本当は働いて稼げるんだから稼いで養育費を払いなさい、という決定がでたとしても、1円もお金がない人からお金を差し押さえることはできません。例えばニートのように、親に養って貰っていて、貯金も収入もない人から養育費を得ることは現実的には困難です。無職だけど貯金等はいっぱいある、などは別ですが…。

働かない理由は簡単に作れる

精神疾患で働けない、と言い出すことも考えられます。本人が精神的な問題を抱えていて働けないと言っている場合、それを本人以外がそんなはずない!と主張することは難しいそうです。実際に離婚が原因で病んでしまう男性もいます。

裁判にも費用がかかる

多くの場合、裁判をするのであれば弁護士さんに依頼することになると思います。その費用も悩ましいと思います。

 

公正証書があっても同じ

ちなみに公正証書を作成していても、無職で財産もない人からお金を差し押さえることは非常に困難です。公正証書があれば絶対に養育費が受け取る、かのように書かれているサイトもありますが、私は決して、そんなことはないと思います。

 

以前より養育費から逃げるのは難しくなった

しかし、ここまではあくまで、「無職で財産もない人から」という前提です。

養育費を払う義務があるのに、養育費の支払いから逃げることは、以前に比べて格段に難しくなっています

2020年から、公正証書等があれば「財産開示請求」という手続きが簡単に行えるようになりました。前提として、銀行の預金を強制執行するには、その銀行名と支店名が必要です。以前は、父親の貯金がどの銀行のどの口座にあるか調べるのが非常に大変でした。父親が教えなくても罰則などがありませんでした。それが、法改正後、財産開示請求があると、父親は裁判所に対して、正直に財産の情報を伝えなければならなくなりました。これに違反すると、最大で懲役(6ヶ月)または罰金のペナルティが課されるようになりました。(預金以外に投資や不動産も)
また、銀行や年金機構に対しても、父親の預金額や口座情報、勤務先を開示して貰えるようになりました。(第三者からの情報取得手続)

背景として、父親(母親)の養育費の不払いと、ひとり親家庭の貧困問題があります。以前と比べて、養育費を払う義務があるのに逃げる、ということは相当に難しくなっています。

このため、インターネットや知人の昔の情報(養育費なんて払わなくて大丈夫だよ)を信じて行動すると、非常に残念なことになる可能性が高くなっています。転職すれば大丈夫、無視しても罰則はない、というのは古い情報です。

ちなみに、強制執行は母親が父親にするわけではなく、裁判所から父親の勤務先に連絡があるので、勤務先の人たちに知られます。とても恥ずかしいらしいので、ご注意くださいね。

もちろん、お子様が成人するまで無職でいる覚悟があれば逃げられるかもしれません。そこまでするのであれば、普通に払った方が楽だと思いますが…。

 

養育費不払い8割の人は、そもそも請求していないことが多い

母子家庭で養育費を受けっている割合は2割、という表現を見たことがあると思います。では、養育費を受け取っていない8割の母親はなにも考えていないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。平成23年度母子世帯調査によれば、離婚時に養育費の取り決めをしなかった母親のうち、

48.6%が父親に支払い意思や能力がないと思った

23.1%が父親と関わりたくなかった

と回答しています。これは個人的な推測ですが、離婚時に父親から「離婚しても養育費を払わない。払うくらいなら無職になってやる」と脅されて、泣く泣く諦めた方もこの中に含まれていると思います。

逆の言い方をすれば、母親が本気になれば、父親が無職などでない限り、養育費を受け取れることは以前に比べると容易になっています。「養育費なんて貰えない」という情報を信じ過ぎずに行動しましょう。

 

大事なことは敵対しないこと

では父親から『働かない(仕事を辞めるから)から養育費を払わない』と言われてしまったら、現実的に、どうするべきでしょうか?

まずはお近くの弁護士さんに相談することがオススメです。様々な事情に大きく影響するため、こうしたページの情報だけで判断することはできません。弁護士さんに相談することが一番です。

次はあくまで個人的な考えですが、父親がそうまでして養育費を払わない理由を聞き、話し合うことが現実的だと思います。子供が憎くて憎くて養育費を払いたくない、というケースは経験上、それほど多くありません。父親が養育費を払いたくない理由は、本当は離婚したくない、奥様の言う通りに従うのがムカつく、奥様に嫌がらせをしたい、ということが多いようです。それか単純にお金がないかです(あくまで個人の考えです)

父親が無職などでない限り、適切な手続きを行えば、以前に比べて養育費は受け取りやすくなっています。ただ、それをすべて行うのは時間、労力、費用を考えると大変です。できるだけ父親と敵対せず、お互いに正しい情報を得て、円満に離婚することがオススメです。

 

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