離婚しても子供の名字は当然に変わらない。自分の苗字は?

離婚と名字、戸籍について調べてみると、意外と難しい!と思うかもしれません。ややこしいです。

 

5つのポイントを覚える

・親子であっても、姓(名字)が異なると同じ戸籍に入れない

・戸籍には親子2代までしか入れない(祖父母、自分、子供の戸籍はできない)

・離婚届を出すと、自動的に旧姓に戻る(親の戸籍に戻る)

・子供がいれば離婚届の「新しい戸籍を作る」にチェックを入れることが多い

・離婚届を出すだけでは、子供の戸籍は変わらない、名字もそのまま

 

前提:男性(夫)が筆頭者である

このページで説明する内容は、結婚したときに男性(夫)を筆頭者として入籍した(新しく戸籍を作った)こと、及び、親権者が母親であることを想定しています。ほとんどがこの形のためです。

再婚のときなどは話が変わります。

 

子供がいない場合、結婚前の戸籍に戻れる

離婚したとき、子供がおらず、自分の親が生きていれば、結婚前の戸籍(親の戸籍に)に戻ることができます。

ここからは子供がいる女性(親権者)を想定して書きます。

 

離婚の際に称していた氏を称する届

まずは自分が「離婚後も現在の名字(夫の名字)を名乗り続ける」か「旧姓(親の名字)に戻すか」を決める必要があります。

離婚後も現在の名字(婚姻中の氏)を引き続き使用したい場合には、「離婚の際に称していた氏を称する届」という書類を離婚した日から3カ月以内に出す必要があります。基本的には離婚届と一緒に出すことがオススメです。一緒に出さないと、一度旧姓に戻ってしまうので、手間が増えます。

夫の名字を名乗り続ける場合、女性は必ず新しい戸籍を作ることことになります。(名字が違うと、親と同じ戸籍には入れないため) 離婚届の「新しい戸籍を作る」にチェックを入れましょう。

逆に、旧姓に戻る場合は、離婚届を出せば自動的に旧姓に戻ります。

 

子供の名字をどうするかを決める

次に、お子様の名字を「今のまま父親の名字のままにする」か「母親と同じ旧姓にする」かを決める必要があります

つまり、

・母親も子供も現在の名字(誰も名字が変わらない)

・母親も子供も旧姓(母親も子供も名字が変わる)

・母親は旧姓、子供は現在の名字(母親だけ名字が変わる)

3パターンが考えられます。

 

母親も子供も現在の名字(誰も名字が変わらない)

母親も子供も現在の名字を名乗る場合、離婚届の「新しい戸籍を作る」にチェックを入れ、「離婚の際に称していた氏を称する届」と一緒に提出します。すると、現在の名字の母親だけの新しい戸籍ができます。この時点でも、母親も子供も同じ苗字(父親の名字)ですが、戸籍は別々です。子供を母親の戸籍に入れるためには、後日、新しい戸籍の謄本を持って、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」の申し立てをして、許可がでたら、市区町村の役場で子供の戸籍を移す(もともとの父親の戸籍から新しい母親の戸籍に移る)手続きをします。子供を父親の戸籍のままにしておくとダメ、ということはありませんが、基本的には母親と同じ戸籍に移した方が良いです。

母親も子供も旧姓(母親も子供も名字が変わる)

この場合、離婚届の「新しい戸籍を作る」にチェックを入れて、提出します。すると、母親の旧姓の母親だけの新しい戸籍ができるので、後日、新しい戸籍の謄本を持って、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」の申し立てをして、許可がでたら、市区町村の役場で子供の戸籍を移す(もともとの父親の戸籍から新しい母親の戸籍に移る)手続きをします。これによって、お子様の名字も母親の旧姓になります。

母親は旧姓、子供は現在の名字(母親だけ名字が変わる)

レアケースだと思いますが…。この場合、離婚届の「新しい戸籍を作る」にチェックを入れて、提出します。すると、母親の旧姓の母親だけの新しい戸籍ができます。なにもしなければ、お子様は父親の戸籍のままなので、お子様の名字はそのままです。母と子供の戸籍(名字)が別々であっても、親権者であることに変わりはありません

ただ、少しだけデメリットがあります。それは、子供が父親の戸籍に入っていると、父親は子供の現住所(住民票の住所)を簡単に取得できてしまう点です。(戸籍の附票)

通常は、離婚後、お互いに正当な理由がなければ相手の住所を調べることはできません。しかし、父親が子供の住所を調べられることで、一緒に住む母親の住所も調べられてしまうのです。逆に言うと、子供を父親の戸籍のままにすることで、父親の現住所が調べやすくなるというメリットもあります。ただ、養育費の不払いなどは正当な理由として父親の住所を調べることが原則可能です。(専門家に依頼しなくても、ご自身で、本籍のある市区町村の役場で戸籍の附票が取得できます) このため、あまりメリットではないかな、と個人的には思います。

また、嫌なケースとして、父親が再婚するときに「新しい妻を俺の戸籍に入れるから、戸籍から子供をどうにかしろ」と言い出す可能性があります…。(このとき、母親と子供の名字が違うと同じ戸籍には入れないので、難しいことになります。子供が18歳以上であれば分籍が可能ですが…)

なお、親子で名字が違うと、病院などで親権者であることの証明を求められることがあり、すごく面倒だそうです。実際、そうした方のお話を聞きました。

こうした理由から、当事務所では、母親と子供で別々の名字を名乗ることはオススメしていません。

 

旧姓に戻るか?そのままの苗字を名乗るか?みんなどうしてる?

さて、多くの人が悩むことが、やはり離婚後の苗字です。子供がいなければ、旧姓に戻ることが多いようですが、子供が学校に通っている場合、難しいですよね…。他にも仕事をしていて、職場で余計な気を使われたくない場合もあるようです。

実は、学校の場合、戸籍上は母親の旧姓に戻しても、学校内で使用する苗字はそのまま、にすることが可能な場合があります。すべての学校で対応してくれるのかは分かりませんが、札幌市内の中学校などでは、普段使用する苗字を変えなくてもOKだったそうです。お悩みの方は、離婚の前に、学校へ相談してみるといいでしょう。高校などに進学するタイミングで苗字を変えることが出来れば、お子さんのストレスも軽減できると思います。

経験的には、小学生以上のお子様がいて、引っ越さない場合は、そのままの名字を名乗り続ける方が多いと感じます。

 

夫の許可はいらない

稀に、離婚する夫から、俺の名字を名乗るな、とか、子どもの名字を変えるな、などと指図するひとがいますが、どちらも夫の許可は不要なので、気にしなくて大丈夫です。

 

豆知識:2回目の離婚は旧姓(親の名字)に戻れない

あまり必要のない知識だと思いますが…。

「佐藤愛子」さんとして生まれた女性が、鈴木さんと結婚して「鈴木愛子」さんになりました。鈴木さんと離婚することになり、「離婚の際に称していた氏を称する届」を出して、離婚後も「鈴木愛子」さんのままでした。その後、山田さんと再婚することになり、「山田愛子」さんになりました。しかし、山田さんとも離婚することになりました。このとき、愛子さんは現在の「山田」か、再婚前の「鈴木」のどちらかの名字しか選ぶことができません。子供のころの名字(両親の名字)には原則、戻ることができません。

ただ、家庭裁判所で色々と手続きをすれば、「佐藤愛子」さんに戻れる可能性もあるそうです。大変らしいですが…。

 

離婚の前に知っておくべき100のこと

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