離婚協議の進め方、申し入れの内容証明

離婚のとき、どう夫や妻に離婚の条件を伝えたらよいか難しいことがあります。また、すでに別居していて、冷静に離婚の条件を伝えたいこともあります。そうしたとき「離婚協議の申し入れ」という手紙を作成することがあります。協議離婚の進め方や離婚協議申込書、内容証明についてご紹介します。

 

まず知っておいて欲しいこと

養育費が何歳まで受け取れるか、法律で明記されていないこと(法務省は22歳のあとの3月を推奨)

高校卒業後(大学など)の進学費用を払う義務は基本的にないこと

一度決まった条件を変更するのは大変なこと

詳しくは後述します。

 

協議離婚の一般的な進め方

離婚が決まったとき、養育費や財産分与などの条件を決める必要があります。このとき、どんな手順で条件を決めるか、一般的な流れをご紹介します。

1、自分の希望の条件を決める

まずは話し合う前に、ご自身がどんな条件を希望するかを決めることが大切です。よく分からないまま話し合いをはじめてしまうと、残念な条件で決まってしまうことがあります。

例えば、養育費の年齢です。法律で養育費は成人(20歳(18歳)の誕生月)まで、と決まっているわけではありません。なんとなく成人までと決めてしまう方がいますが、当事務所で最も多いのは22歳の3月(大学を卒業する月)です。もちろん、単純に大学卒業まで養育費を払って欲しい、と言っても「大学に進学しないかもしれない」と言われることがあります。しっかり説明できることが大切です。

また、父親が高校卒業後の進学費用(大学や専門学校の学費)を負担する義務は、基本的にはないと考えられています。例外としては、お子様が高校生などで、大学受験や進学が決まっている(父親が認めている)段階であれば、養育費や進学費用を負担する、という裁判例があります。つまり、中学生以下のお子様の場合、大学進学費用を父親が負担するかは、父親の任意、と考えておいた方が無難です。

他にも財産分与や進学費用、家の処分などもあとで後悔する方がいます。一度、決めてしまうとあとから撤回したり、条件を変えることは大変です。まずは話し合いを始める前に、自分がなにを希望するか、希望していいか、最低限はなにかを知りましょう。

2、話し合って、書類を残す

離婚全体の9割は協議離婚といって、調停や裁判をしない離婚です。協議離婚の場合、話し合って、離婚協議書や公正証書を作成し、離婚届を出して終わりとなります。

2-1、条件を口頭で伝えて話し合う

最も多いのは、希望する条件を相手に言葉で伝えて話し合う、という方法です。メリットは比較的円満であること、無駄になる費用がかからないことです。デメリットは冷静に伝えること難しいこと、根拠を示しにくいことです。

2-2、先に離婚協議書を作成する

先に専門家に依頼して離婚協議書を作成し、それを配偶者に見せて話し合う、という決め方もあります。この方法であれば、すべての条件を冷静に伝えることができます。なにを話し合っていいか分からない、という場合にもオススメです。デメリットは、調停などに進む場合に書類作成費用が無駄になること、一方的な印象をもたれる可能性があること、離婚理由などは書かれていないこと、根拠などは別に説明しなければならないことがあります。

2-3、弁護士さんに依頼する

弁護士さんに依頼して、説明などもすべてお任せする、という方法もあります。デメリットは費用だけだと思います。

2-4、離婚協議申立書を作成して渡す

後述します。

3、調停する

協議離婚が難しい場合、調停という方法もあります。費用が少ないこと、最低限の要求が認められやすいなどのメリットがあります。デメリットは時間がかかること、最低限以上を求めることが難しくなることなどがあります。例えば義務ではない大学進学費用は求めない、養育費は算定表の下限の金額を高校卒業まででいい、学資保険は解約して折半、などの場合です。養育費を1円も払わないと言われている、連絡が取れない、などではオススメです。

 

離婚協議申入れの内容証明とは?

離婚協議申入書とは、親権や養育費、慰謝料や財産分与などの希望をまとめて、相手に連絡する手紙です。離婚の理由などを書くこともあります。こうした名称の書類があるわけではなく、単にこうした内容の手紙のタイトルのようなものです。内容証明郵便で送らなければならない、ということではありません。

 

離婚協議申入書はどんなときに利用するの?

基本的には、離婚の条件や希望を冷静に伝えたいときに利用します。例えば、二人で話すと喧嘩になってしまいそうで怖い、相手に言いくるめられそうで怖い、余計なことを言ってしまいそうで怖い、できるだけ正確な根拠を示したい、などです。

実際に、お二人で話し合っても感情的な話(どちらが悪い、離婚原因は○○だ、子どもが可哀想)になってしまうことも珍しくありません。円満に協議するために、根拠や理由、事実や金額を冷静に伝えたいときに利用すると良いでしょう。手紙であれば、ご自身だけでなく、ご家族や専門家と相談しながら、じっくり内容を考えた上で相手に伝えることができます。また、受け取った側も、ゆっくり条件や質問に対して考え、回答することができます。

 

離婚協議申入書にはどんな内容を書くの?

一般的には、離婚協議書に記載する内容です。親権、養育費、面会、進学費用、財産分与(家や来車の名義、保険)、慰謝料、年金分割、通知義務などについて記載します。条件を書くだけではなくて、その考えの根拠や権利義務について、分かりやすく伝えることが目的です。また、こうした内容以外にも、今後の流れなども記載できます。例えば

・養育費の金額の根拠(算定表の説明)

・離婚届は3月までに出したい

・半年後に離婚届を出すまで生活費(婚姻費用)を払って欲しい

・夫に振り込まれる児童手当を渡して欲しい

・ボーナスが出てから財産分与を計算したい

・通帳やハンコを速やかに返却して欲しい

・離婚が成立するまでも子どもに会いたい、会って欲しい

・内容が決まったら公正証書にしたい

・子供の新しい健康保険証を渡してほしい

・家具や家電を取りに行きたい

・離婚後の生活費(扶養的財産分与)を払って欲しい

など、今後、具体的にどんなことをするか、したいか、なども書くことができます。

もちろん、○○しないと調停をします、など書いても良いとは思いますが、あまり脅すようなことはオススメしません。また、必要がなければ離婚の原因や理由を書くこともオススメしません。慰謝料の根拠として書く必要もあるかもしれませんが、基本的には責めるような内容は省略した方が無駄な時間がかかりません。

公証役場に必要な持ち物なども、そのときに伝えれば十分です。最初からすべてを書いても、理解に時間がかかってしまいます。優先すべきことから、冷静に、丁寧に伝えましょう。

 

理解して貰うことが目的

相談される方から見せて頂く、相手からの手紙で、養育費○万円、財産分与○万円、面会月1回、など、条件だけ書かれているケースがあります。

いきなり、養育費は○万円!と主張されても、相手も判断に困ると思います。例えば、養育費の算定表というものがあって、それに照らし合わせると○万円になります。ただ、こうした事情があるので、プラス1万円で○万円を希望します。と書けば、相手も納得してくれるかもしれません。

また、養育費の算定表は4万円から6万円、のように幅がありますが、計算式にあてはめて、4万5670円、という10円単位まで目安の金額を求めることができます

財産分与や慰謝料なども同じです。参考になる資料などを添付しても良いかもしれません。大切なことは、事実や希望を書くだけではなく、相手に理解、納得して貰うことです。希望する離婚条件の説明書のようなイメージが良いと思います。応じないなら裁判だ!などと書く必要はありません。

 

法務省も養育費は22歳の3月を推奨している

夫から「成人の年齢も20歳から18歳になったんだから、養育費も18歳まででいいよね?」と言われた、という相談が多々あります。

これに関しては、法務省が明確に見解を示しています。

成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。

引用元:法務省 成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について

「養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるもの」です。お子様が進学している場合、成人したとき(20歳の誕生日の月)というのは、大学や専門学校の2年生の○月、ということになります。こんな中途半端な期限で決めるのは変ですよね。20歳になったら、いきなり収入が得られるわけではありません。

なお、法務省では

今後,新たに養育費に関する取決めをする場合には,「22歳に達した後の3月まで」といった形で,明確に支払期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。

引用元:法務省 成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について

と「22歳になったあとの3月」つまり、大学を卒業する3月までとするのが望ましいと明確に示しています

補足すると、留年や浪人、大学院や博士課程に進むとしても、基本的には22歳の3月とするのが良いという見解です。30歳まで学生の人もいますからね…。期限を決めることで、父親も安心できます。(逆に言えば、就職するまで養育費を払う、は確認が必要です)

また、ご主人が「でも高卒や専門卒で就職するかもしれないじゃないか!」と言いそうなのであれば、公正証書の中に「ただし、就職した場合の養育費はその月まで」と書けばいいだけなのです。

 

大切なことは、こうした情報をしっかり知っておく、ということです。

残念なことに、こうした情報を知らずに「とりあえず養育費は20歳までという話で決まってしまいました」という方も大勢います。繰り返しになりますが、一度、条件が決まってしまうと、あとから変更は大変です。

こうした情報を丁寧に教えてくれる専門家に相談することも重要です。専門家の中には「養育費は20歳まで」と決めつけてアドバイスする方もいたそうです。(実際にお客様から、そういうアドバイスをされたと言われることがあります) 確かに、最初から養育費は20歳までということにしておけば、夫婦で揉めることもなく、仕事(案件)が早く終わります。ただそれが、本当に依頼人と子供のためになるのか…。

他にも、知っておくべきことはたくさんあります。

 

内容証明で送る必要がある?

インターネットで検索すると、離婚協議申入書を内容証明郵便で発送するケースなどが書かれています。プレッシャーをかけるメリットがないとは言いませんが、揉めることが目的でなけば、普通の手紙を書留や特定記録郵便で発送すれば十分だと思います。内容証明で送ってしまうと、どうしても身構えてしまいます。ほとんどの場合は手渡しです。

 

円満な離婚をご希望ならご相談くださいね

当事務所では「離婚協議申入書」を3万円(税別)でご依頼いただけます。別居中でも同居中でも、どちらでも作成できます。郵送ではなく、手渡しする方もいます。

基本的にはご主人や奥様が納得し、円満に離婚の条件が決まるようなお手紙です。親権を争う場合など、紛争性のある場合は弁護士さんにご相談されることをオススメしています。行政書士は円満な離婚のときに、書類を作成することしかできません。円満な離婚をご希望の際は、お気軽にご相談くださいね。

 

揉めない、誤解しないための手紙

当事務所の考える「離婚協議申入書」は「ご主人が誤解しないこと、奥様が条件や協議で後悔しないこと、お二人が無駄に揉めないこ」をテーマに作成しています。

例えば、男性から「妻から一方的に離婚の条件を突きつけられた」という相談が多々あります。確かに、その手紙には奥様が考える離婚原因や条件が色々と書いてあります。特に専門家が作成した書類は偉そうというか、ご主人からすれば不快な内容もあります。当たり前ですが、ご主人にも言い分があります。正直、余計なことを書いて敵対しても、お二人に良いことはなにもありません。「じゃあ調停でも裁判でもやりましょう」となってしまいます。奥様がご主人と争うつもりがある、法外な条件を求めている、と誤解されてしまうと、無駄なお金と時間、ストレスがかかることになります。それではあまりに不毛です。

奥様にとっても同様です。養育費が何歳まで受け取れるか、大学進学費用を負担して貰えるか、などで奥様が後悔しないことが大切と書きました。慰謝料のために費用や時間をかけて争った結果、養育費の年齢や進学費用で残念なことになるケースがあります極端に言えば、争って慰謝料100万円を受け取るか、円満に大学進学費用100万円を受け取るか、どちらが楽でしょうか?

もちろん、両方とも受け取れることがベストです。しかし、残念ながらそう都合の良いことばかりではありません。円満に求めたら大学進学費用が必ず受け取れるわけでもありません。ただ現実的に、慰謝料ではなく進学費用として請求される方も多くいます。その方がご主人のプライドを保て、奥様も楽だからです。

※慰謝料を請求してはダメ、ということではありません。表現が大切、ということです

この手紙に必要なことは、ご主人を責める言葉ではありません。お子様のためになにが必要なのかを納得して貰うための言葉です。そして、離婚しても子供の両親として、できるだけ良い関係を築くことです。

ご依頼を希望される方はLINEやメールでお気軽にお問い合わせくださいね。

※状況によってはお断りする場合があります。ご了承ください。

※ご依頼いただいても、必ずご希望の条件で離婚できる保証はありません。

 

離婚協議申入書をご依頼された方の感想

持ち家があり、離婚後もこのまま子どもたちと住み続けたいと考えていました。しかし、主人の性格上、私の言うことは否定ばかりなので、こちらに依頼しました。養育費の代わりに住宅ローンと固定資産税を払って貰うことを中心に、いくつか選択肢を作ってもらいました。主人は最初、この家が高く売れるうちに、いますぐ売った方が良いと言っていましたが、手紙を読んで、このまま住み続けても良いということになりました。持ち家に私と子供が住み続けるメリット、デメリットを分かりやすく書いてあったのが良かったと思います。特に、もし子供が成人する前に夫が病気になったとき、団信の特約で住宅ローンがゼロになる可能性(そして養育費も払わなくてよくなる)が決め手になったようです。大学進学費用も学資保険をこのまま払ってくれることになりました。争うことなく離婚ができて、費用面でもかなり節約できました。弁護士さんに依頼するお金がなかったので助かりました。思ったより早く離婚届を出せて、児童扶養手当も早く受け取れることになりました。依頼して良かったです。

※守秘義務があるので脚色しています。フィクションです。

 

離婚の前に知っておくべき100のこと

当事務所ではこれまでたくさんの離婚や不倫の相談に応じてきました。LINE登録は4千件以上です。これまでの経験や知識を「離婚の前に知っておくべき100のこと」としてまとめています。

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