離婚の準備はなにをしたらいいですか?と聞かれることがよくあります。ここでは、当事務所の考える離婚準備についてご紹介します。子供のいる女性を想定しています。長くなるので、簡単に書きます。
離婚準備の1番はご主人が離婚届にサインしてくれるか
離婚の約9割は協議離婚といってお互いが離婚届にサインして行う離婚です。調停離婚や裁判は残りの約1割だけです。つまり、旦那の浮気が原因でも、DVが原因でも、ご主人が離婚届にサインしてくれないと、すぐには離婚できないのです。裁判をする場合、時間もお金もたくさんかかります。離婚の際、養育費や慰謝料、手続きを不安に思う人がいますが、まずは旦那様が離婚届にサインしてくれるか、が最大のポイントです。離婚準備は相手が離婚届にサインしてくれるかどうかで大きく異なります。
知っておくべきこと
誤解があること、あまり知られていないことをご紹介します。
・養育費や財産分与、慰謝料は離婚後でも請求できる
・離婚の公正証書は離婚後でも作成できる
・離婚届は署名だけで十分かも
・別居だけでは児童扶養手当は基本的に受け取れない
離婚の準備の前に離婚後に住む場所を考える
配偶者が離婚に合意してくれたとして、次に大切なことは離婚後にどこに住むかです。今の家に住み続けたいか、今の家を出て行くか、などです。
住み続ける場合のメリット・デメリット
・持ち家だと名義がどうなるか、ご主人が許可してくれるか
・離婚しても配偶者が出ていかない可能性がある、時間がかかる
・子供の環境、学区を変えないという点はメリット
引っ越す場合のメリット・デメリット
・実家に戻れるなら費用の面で安心、ただ児童扶養手当が受け取れない可能性がある
・家賃が発生する。初期費用や養育費が受け取れない可能性を考える
・持ち家だと売れるまで3重に家賃がかかることも
・公営住宅は簡単に入れない
・自分のタイミングで別居できるのがメリット
実家に帰る場合やご主人名義の持ち家に住み続けてご主人が出ていく場合はそれほど心配はありません。賃貸の場合は、お金に余裕が必要です。
離婚できないときに、どちらが困るか?
離婚するかしないか、だけでなく、タイミングも重要です。
例えば、二人とも離婚を希望していて、奥様が働いていて、近所の実家に戻る場合、かなり安心です。家賃や子供の転校の心配がなく、別居すればストレスも減ります。大急ぎで離婚届を出さなければならないケースは少ないと思います。
逆に、ご主人だけ離婚を希望していて、賃貸に住んでいる場合などは不安です。ご主人の給料を奥様が管理できているならマシですが、いつまで続くかは分かりません。もし、ご主人が失踪してしまったら、養育費(婚姻費用)は貰えない、離婚していないから児童扶養手当も貰えない、家賃や光熱費すら払えない、という最悪な事態になる可能性もあります。
失踪することは稀ですが、ご主人が家出して、最低限の婚姻費用しか払ってくれないことは珍しくありません。婚姻費用だけで生活できるか、はとても重要です。男性は籍を抜くこと(離婚)にメリットがない可能性があります。こうしたとき、離婚しないと児童扶養手当が受け取れない、児童手当はご主人に振り込まれる、保育園料や給食費が高い、などの問題が生じ、困るの女性(母親)です。
もちろん、ご主人の暴力などが原因の場合など、離婚や別居を急ぐこともあります。離婚しないと、どちらが困るのか、がとても重要です。
これからの半年がとても大事
円満な離婚ができそうだとします。難しいのはこれからの半年です。よく、離婚しないと保育園に入れない、保育園に入れられないから働けない、働けないから離婚できない、という相談があります。お子様が小学生でも中学生でも同様で、これからの半年が重要です。
すぐ離婚届を出せる場合もあれば、そうでない場合もあります。その他にも
・家が売れるか分からない
・仕事が見つかるか分からない
・公営住宅に入れるか分からない
などがあります。離婚協議がはじまって、これからどんなことが起こりそうかを知っておくべきです。また、なにが不安なのかによって離婚準備も異なります。
家がとても重要
持ち家があれば、住み続けた方が経済的には楽だと思います。子供の環境でも良いかもしれません。持ち家は金額的にも大きいので、どうしたいか、をよく考える必要があります。
その他
いろいろとありますが、ざっとご紹介します。
・養育費は算定表を確認しておく、ご主人の源泉徴収票などを確認しておく。できれば養育費をご主人と話し合う前に専門家に相談しておく(一度決まると変更が難しくなるため)
・ご主人の年収が不明な場合、所得証明書を取得するケースも。所得証明書は本人以外でも同居の家族は取得できるそうです。
・財産分与はすべての通帳の見開き(銀行名や支店名、口座番号が書いてあるページ)のコピー、最新の残高ページのコピーをとること(通帳を持ち逃げされたときのため)
・学資保険や生命保険、住宅ローン残高など関係しそうなものは写真に残しておく
・最近の固定資産税納税通知書、ねんきん定期便のハガキなどは必要になる可能性があるので捨てないでおくこと
・児童扶養手当は区役所に、年金は年金事務所に相談する
・大学無償化、ひとり親家庭自立支援給付金事業などを知っておくといいかも。
必ず専門家に相談する
離婚を考えたら、弁護士さんや行政書士など、離婚に詳しい専門家に相談しましょう。養育費の金額だけでなく、何歳まで払われるか、どうやって払われるのかも重要です。その他にも学資保険や進学費用、慰謝料や財産分与、面会など、離婚協議書や公正証書に関係することを教えて貰えます。
最近では、養育費の保証会社をつける方もいます。再婚した場合にどうなるか、養育費を払ってくれないときになにができるか、進学費用の負担なども知っておきましょう。
個人的な意見ですが、離婚後の戸籍や健康保険などの手続きは、そのときになれば役所で詳しく教えてくれるので、離婚前にそれほど心配する必要はないと思います。
離婚の準備は優先順位が大事
離婚の準備はなにから始めたらいいですか?と聞かれることがあります。
正直、なんと答えていいか分かりません。
どちらが離婚したいのか、ご主人が離婚に応じてくれるのか、奥様は働いているのか、これからどこに住みたいか、親権で揉めそうなのか、ご主人は養育費や進学費用を払ってくれそうか、などなど、事情によって大きく異なります。
それによって、離婚を急いだ方がいいのか、まだ余裕があるのか、児童扶養手当が重要なのか、なくても困らないのか、お子様にとってなにが得になりそうか、などがまったく異なります。
とりあえず別居、という考えは要注意です。別居するときは、いつ離婚されても大丈夫か確認が必要です。別居が長引いて(ご主人が離婚に応じてくれなくて)児童扶養手当が受け取れなくても生活できるかも確認しましょう。
まずはいま、大事なこと・そうでないこと、できること・できないこと、最悪な状況を知って、優先順位を決める必要があります。
もちろん、不安な気持ちも分かります。初めてのことで、分からないことばかりです。まずは専門家に相談した方が早いし、安心です。インターネットですべてを調べることはできません。すべて知っていたら本を1冊書けるレベルです。そこまでする必要はありません。ご自身がいま、必要なことだけ分かっていれば大丈夫です。
離婚準備のまとめ
離婚準備のほとんどは【円満に離婚できるか・離婚後に生活できるか】です。
この2つさえクリアできれば、それ以外はそれほど難しくありません。養育費は離婚後でも請求できます。あとは知っておくと得をすること、いまは必要でなくても備えておくことがあります。基本的には悩んだり、スマホで調べるより、専門家に相談するのが一番だと思います。
離婚の前に知っておくべき100のこと
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