離婚相談の際、学資保険について質問されることが多くあります。離婚する際、学資保険をどうするか、実際にどういうことが考えられるかをご紹介します。
子供の年齢、離婚理由、ご主人の意思がポイント
離婚の際に学資保険をどうするか考えるとき、お子様の年齢、離婚の理由、ご主人がどうしたいか、かがポイントになります。あとで詳しくご紹介しますが、まずは基本的なことを書きます。
離婚と学資保険の基本
離婚の際の学資保険を考えるうえで関係することをご紹介します。
学資保険は財産分与の対象になる
お子様のためのお金ですが、基本的には財産分与の対象となります。このため、普通に考えると解約して戻ってきたお金(解約返戻金)を折半(半分こ)することになります。ただ、当事務所での実際のご相談では、解約するケースはあまり多くありません。約5割が奥様に名義変更する、約3割がこのままご主人名義のままにしてご主人が保険料を払う、残り2割が解約する、といったところだと思います。
そもそも父親が大学進学費用を負担する義務はない
お子様の年齢や状況にもよりますが、基本的には高校卒業後の学費を父親が負担する義務はないそうです。お子様が高校生で進路が決まっているなどは例外です。例えばお子様が小学生以下であれば、必ず約束できるお金ではないと考えた方が無難だと思います。このため、争っても損をする可能性もあります。状況によりますが、円満に離婚した方が、長い目でみたときに得になるケースもあります。
学資保険には生命保険的な役割があることが多い
学資保険には、もし契約者が亡くなったり働けなくなった場合、その後の保険料を支払わなくても、満期保険金が全額受け取れる、というプランが多いと思います。つまり、生命保険的な役割があるかもしれません。(プランによります) 養育費は基本的に父親が亡くなった場合は受け取ることができません。このため、リスクを分散する意味で学資保険に加入を続ける方がいます。
解約すると戻ってくるのは80%
学資保険は解約すると、それまでに支払ったお金がすべて戻ってくるわけではありません。例えば5年程度加入して解約する場合、戻ってくる割合(返戻率)は80%程度のようです。長く支払っているほど、返戻率は高くなります。
そもそも名義変更できるとは限らない
学資保険は私に名義変更しますという相談でも、実際に名義変更できるとは限りません。よくあるのが、特約がついている、学資保険ではなく積立型の生命保険のケースです。奥様もご主人も名義変更に合意している場合でも、必ず名義変更できるわけではありません。
保険料を養育費と同じように受け取ると児童扶養手当が減る可能性がある
学資保険の名義を妻に変更する、ただ、毎月の保険料は夫が負担することにして、養育費と一緒に支払う、というケースがあります。この場合、その保険料は養育費としてカウントされ、児童扶養手当が減る、もしくは貰えなくなる可能性があるので注意が必要です。
簡単に書きます。児童扶養手当の金額は母親の所得などで決まります。所得には養育費の8割がカウントされます。養育費として受け取る金額以外にも、教育費などの名目で受け取っても養育費として計算される可能性があります。
このあたりは市町村などよっても異なるので、お住いの区役所、役場にお問い合わせください。
一番の理想は父親名義で父親が支払うこと
上記を踏まえると、父親名義のまま、父親が学資保険料を支払って、子供が高校を卒業するころに学資資金を払って貰う、が一番の理想だと思います。そうすれば名義変更も生命保険的な役割も児童扶養手当も考える必要がありません。
ただ、やはりご主人名義のままにする最大のデメリットは、ご主人名義のままだとご主人が勝手に解約してしまうのではないか?という心配です。
子供の年齢、離婚理由、ご主人の意思
冒頭に戻ります。学資保険をどうするか考えるとき、子供の年齢、離婚理由、ご主人の意思が大切です。
お子様の年齢が小さいと継続するリスクが少ない
まずはお子様の年齢です。例えばお子様が高校生で15年間、学資保険を積み立てているとします。この場合、学資保険の名義を変えずに父親が勝手に解約して浪費してしまった場合、とても大変です。金額も大きいですし、これから進学費用を貯める時間もありません。
逆に、まだ学資保険を1、2年しか積み立てていない場合、解約しても、それほど返戻金の差は大きくありませんし、仮に父親が将来、勝手に解約しても、ダメージは大きくありません。
学資保険に長く加入している場合は解約して返戻金を受け取るか母親に名義に変えるケースが多いです。逆に学資保険の加入期間が短い場合は解約したり、そのままにするケースが多いと感じます。
後者の場合、いまの学資保険は父親のままにして、母親は新たに新しい学資保険に加入する、というケースもあります。そうすれば公平ですし、最悪、自分の分は確保できます。
父親に対し、あなただけ学資保険に入って今後15年間保険料を払い続けてね!というと、どうしても不公平感が生じます。お互いに加入することで、そうした面が解消されるかもしれません。ただ、学資保険は一般的に、お子様が小さいうちしか加入できません。6歳から7歳までと制限されているプランが多いようです。
離婚理由が借金などだと解約か名義変更が多い
これは当たり前ですが、離婚理由がご主人の借金などの場合、解約か名義変更がほとんどです。やはり勝手に解約される不安が大きいためです。ご主人の年収、年齢、職業、貯金額、浪費度合いなどにもよると思います。他にご主人が再婚しそうかどうか、なども影響するようです。
ご主人の意向が重要
最後は、ご主人がどうしたいか、です。
例えば子供が大好きなご主人で、子供が大学卒業するまで最大限のサポートをしたい、自分も親のサポートで大学を卒業しているので子供にも同じことをしたい、という場合、学資保険や学資資金で期待できそうです。
逆に、高卒のなにが悪い、俺は奨学金を借りて大学に行ったから子供も同じようにすればいい、子供に興味がない、という場合は不安です。解約や名義変更が良いかもしれません。
その他のいろいろ
学資保険料を払っていることの証明を約束する意味はあるか
学資保険はこのまま夫名義にして、保険料は夫が支払う。ただ、不安なので毎年、ちゃんと払ったかどうか証明できるものを提出するよう公正証書に書けますか?という質問があります。
答えとしては、書けます。ただ、書いたところで、ご主人が証明してくれないときにどうしますか?訴えますか? 残念ながら、お金の支払いと違って行動は強制することがほぼできません。訴えるにも費用がかかります。もちろん、書かないより書いた方が安心ですが、書いたら大丈夫、ということではありません。
名義変更は保険会社によって手続きが異なる
学資保険の名義変更などは、保険会社によってかなり手続きが異なります。
例えば、名義変更のための申請用紙を奥様が取り寄せることができるケースもあれば、ご主人本人からの問い合わせでなければ申請用紙すら送れないと言われた、という依頼人もいました。その他、離婚届を出したあとにしか変更できないと言われたケースなど、色々なことがあります。もし名義変更するのであれば、なるべく早く、保険会社にお問い合わせしましょう。
他の保険も見直すことをオススメします
ひとり親家庭に対する医療費助成の制度があります
また、万が一、亡くなった場合には遺族基礎年金(子供二人で年間約100万円)や遺族厚生年金などの制度があります。もちろん、保険は万が一を考えると加入したおいた方が安心です。しかし、タダではありません。
離婚しても毎月、数万円の保険を払っていて生活が苦しい、不安、という相談があります。個人的な意見ですが、そこまで手厚い保障は難しいのでは…と思います。道民共済くらいで良いかもしれません。どちらにしても、保険屋さんに相談する前に、ご自身で調べることをオススメします。大学無償化など、昔に比べて収入が少なくても子供の進路は選びやすくなっています。
大学無償化と学資資金について
大学無償化についてご存知でしょうか?
2020年4月から収入の低い世帯に対して、大学進学費用の援助がはじまりました。最大で、国立大学なら、入学金と授業料のほとんどが支払えることになります。(詳細は検索してみてください)
逆に言うと、父親が、大学無償化になったんだから俺は1円も払わない!とか学資保険なんか入らなくていい!と言い出すかもしれません。
そうなると不安ですよね。
まず現在のところ、大学無償化は世帯年収によります。全額支援となるのは年収270万円程度のようです。※扶養人数などによって異なります
年収によって3分の2、3分の1と減額されます。つまり、必ずしも全額無償化になるわけではないのです。
また、あくまで国立大学の場合に入学金と授業料がまかなえそう、というだけで、教科書代や諸経費は負担することになると思います。また、私立大学などは約7割程度の支援になるようなので、約3割と教科書代などの負担が必要になると思います。
その他、奥様の年収が低い場合でも、実家の父親(祖父)に現役並の収入があって同居している場合、制度の対象外になるかもしれません。
正直、将来のことは分かりません。備えることが大切なのです。
臨機応変な公正証書を作成しよう!
将来のことをいま決めたり、揉めても仕方ありません。
そうした場合、臨機応変な公正証書を作成すれば良いだけです。
例えば『もし大学無償化の対象となった場合は、その差額(足りなかった金額)だけを父親が母親に支払う』とすれば、ご主人の疑問は解決ですよね? 余ったお金は父親のものです。
これは、大学に進学するか分からないから進学費用を払わない!という場合も同じです。進学する場合だけ支払う、と書けばいいだけですよね。
もちろん、私立の医学部に行くから3千万円払って、と言われても困るので、上限の金額を決める必要もあります。
ただ、単純にこう書けばよいわけではありません。強制執行するためには、金額と時期を明確にしておくことが大切です。足りない分を払う、と書くと難しくなります。
まとめ
学資保険は、とりあえず解約して折半、というだけではありません。
解約するにしても、父親が子供にどんな進路を選ばせてあげたいか、どんな制度や費用があるか、をお互いに知っておく必要があります。
貯め方も重要です。高校3年の3月に◯万円払う、とだけ約束して、もしそのお金が用意されていなかったらどうなるでしょうか? そこから進路を変えたり、奨学金の申請は困難です。
どんな可能性やリスクがあるかも含めて、公正証書や離婚協議書を作成する必要があります。
まずはお近くの離婚に詳しい専門家にご相談されることをオススメします。
離婚の前に知っておくべき100のこと
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