札幌市の養育費の確保支援

2021年7月から札幌市で「ひとり親家庭等養育費確保支援事業」というものはスタートしました。

簡単に書くと「公正証書(養育費)の作成費用のうち最大2万4千円を補助してくれる」「養育費保証サービスを利用する場合、最大5万円を補助してくれる」などがあります。

なるべく分かりやすく、ご紹介します。

 

背景・目的

ひとり親、特にシングルマザーの貧困が社会的に問題になっています。札幌市は全国的にも離婚率が高く、また、若い女性や母親が多いことが知られています。母子家庭が経済的に苦しい理由として、養育費が受け取れていないケースが多いことが指摘されています。

こうした背景から札幌市では養育費の確保を支援する取り組みが2021年7月からスタートしました。

 

対象

対象は

ひとり親家庭又は現に20歳未満の児童を扶養している親であって離婚を予定している方で、次の各号すべてに該当する方

(1)札幌市内に居住していること

(2)養育費の対象となる児童を現に扶養していること(離婚を予定している方の場合は、離婚後も引き続き養育費の対象となる児童を扶養する予定であること)

引用元:札幌市 さっぽろ子育て情報サイト

と書かれています。ポイントは札幌市に住んでいる方のみ、ということです。2021年8月6日現在、北海道でこの制度があるのは札幌市だけです。

※養育費保証サービスを提供している株式会社Casaの「養育費の保証料について助成制度を導入している自治体」、及び、株式会社イントラスト「主な地方自治体一覧」からの情報です。

現在、札幌市以外で利用できる最も近い市町村は仙台市のようです。

 

公正証書の作成の費用って?

離婚の公正証書とは、養育費や財産分与、慰謝料や年金分割に関する約束を公証役場という場所で作る書類のことです。

公証役場への手数料(費用)は、記載する金額によって決まります。このうち、支援事業では、養育費に関する部分を払ってくれるようです。財産分与や慰謝料の部分は対象外です。養育費は、最大で10年分の養育費の金額が計算の対象になります。

 

公証役場の手数料の表をご紹介します

公証役場への費用
目的の価額手数料
100万円以下5000円
100万円を超え200万円以下7000円
200万円を超え500万円以下11000円
500万円を超え1000万円以下17000円
1000万円を超え3000万円以下23000円
3000万円を超え5000万円以下29000円

公正証書に記載する養育費の対象が600万円の場合、手数料が1万7千円かかる、ということです。

具体的に紹介します

例1 養育費が月5万円 子供が5歳の場合で22歳まで払う(17年間あるけれど、対象は10年まで)

5万円 × 12か月 × 10年 = 600万円 → 手数料は1万7千円

例2 養育費が月5万円 子供が15歳で20歳まで払う

5万円 × 12か月 × 5年 = 300万円 → 手数料は1万1千円

例3 養育費が月10万円、ボーナスで年2回 各20万円 10年

年間160万円 × 10年 =1600万円 → 手数料は2万3千円

 

逆に言うと、養育費が月25万円以下の人の手数料はほぼ札幌市が負担してくれる、というになります。(その他の費用は除く)

※養育費が10年で3千万円、年間300万円、月25万円で計算。ボーナス払いなし。

補足&注意

上記の手数料はあくまで「養育費だけの手数料」です。

この他に、財産分与や慰謝料のことを書けば、それに対して手数料がかかります。また、年金分割について書けば、また手数料がかかります。

さらに詳しく知りたい方は松戸公証役場の手数料のページをご確認ください。こちらには

・養育費が10年で300万円なら手数料は11000円

・財産分与と慰謝料が200万円なら手数料は7000円

・年金分割は11000円

・その他、公正証書の正本謄本代などで約4000円

合計で3万2千円がかかりますと書いてあります。このうち、札幌市が負担してくれるのは1万1千円とその他の4千円、合計1万5千円いうことになります。公正証書の手数料を全部払ってくれるわけではない(財産分与や慰謝料、年金分割に関する費用は払ってくれない)ということをご理解くださいね

なお、札幌市HPの記載例によれば、

原本¥17,000
超過枚数¥500
正本¥1,500
謄本¥1,500
送達・送達証明¥1,650
戸籍謄本¥450
(合計)¥22,600

と書かれているので、正本や謄本の代金、交付送達や送達証明書の代金も補助の対象となっているようです。

※ちなみに、年金分割は書く必要がない場合もあるので、専門家にご相談ください

 

養育費保証サービスとは??

養育費保証サービスとは、父親(母親)からの養育費の支払いが止まってしまった場合に、父親(母親)の代わりに保証会社が立替え・支払いをするサービスです。つまり、父親が保証会社に養育費(分の金額)を払わなくても、契約期間(1年から3年)は、保証会社が母親に養育費を払ってくれる、ということです。札幌市が実施しているわけではなく、民間企業のサービスです。詳しくは【養育費保証サービスとは?】をご覧ください。

このサービスを利用する場合、保証料を払う必要があります。

主なサービスの場合、初回の保証料は養育費1か月分です。つまり、養育費が毎月3万円なら初回保証料も3万円、毎月10万円なら初回保証料も10万円です。

この初回保証料について、最大5万円を札幌市が負担してくれるよ、というのがこの支援事業です。

サービスを提供している会社は5社くらいしかないので、気になる方はとりあえず資料請求してみるとよいでしょう。無料です。

 

継続保証料がかかります

初回保証料を札幌市が負担してくれるよ」と書きました。初回保証料とは、契約するときに支払う手数料です。初回保証料のほかに、継続保証料というお金がかかります。これは自己負担です。

継続保証料は安いプランで月1千円か1年間にひと月分の30%がかかります。よく利用されるプランを比較してご紹介します。(他にも会社やプランはあります)

例1:株式会社Casaの場合

養育費の金額に関係なく月1000円(年間1万2千円)

例2:株式会社イントラストの場合 1年間分の2.5%

養育費が月3万円なら年間9千円

養育費が月4万円なら年間1万2千円

養育費が月5万円なら年間1万5千円

※プランがチャイルドサポート30の場合

 

その他のこと

そのほかに関係しそうなことを書きます

後払いです

これらの支援金は、すべて後払いです。自分で公正証書への手数料を払ったあとに、区役所で申請して、支援金の振り込みを待つことになります。このため、まずは全額をご自身らで用意しなければなりません。ちなみに、公証役場への費用負担は妻が払う、という決まりはありません。当事務所では夫婦で折半と書くことが多いです。

※追記 2021年8月末に区役所で公正証書作成費用の還付について手続きしたお客様によれば、9月21日に「サッポロシ」名義で2万円ちょっとが振り込まれていたそうです。なのでおそらく、翌月には振り込まれるのかな、と思います。なお、児童扶養手当を申請したついでに還付も申し込めたそうなので「児童扶養手当証明書」は必ずしも必要ないかもしれません。

ちなみに、当事務所への費用(公正証書案の場合は6万6千円)のお支払いは後払いで大丈夫です。もし、お手元にお金がなくて困っているという場合は、札幌市から支援金が振り込まれてからの清算でも大丈夫です。

申請からどのくらいで払われるかなどは、これから実際に利用された方に話を聞いて、反映させたいと思います。

子どもの人数は関係ありません

このページに「養育費が月5万円」などと何度も書きました。この金額は子ども全員の合計の金額です。一人あたり、ではありません。養育費は算定表などをもとに算出すると、子供の人数によって大きく金額が異なります。しかし、札幌市のひとり親家庭等養育費確保支援事業も子供の人数によって支援金額が変わる(増える)わけではありません。

子どもが1人で養育費月5万円の場合でも、子供が3人で養育費月10万円の場合でも、養育費保証サービスを利用する場合の支援金の上限はどちらも合計5万円です。

ADR他

札幌市のひとり親家庭等養育費確保支援事業にはADRという制度を利用した場合の利用負担も対象になっています。ただ、難しいのでここには書きません…。

 

公正証書を作成しましょう!

養育費保証サービスの一部のプランは、公正証書や調停調書などの書類がないと利用できないものあります。

全国的な取り組みとして、公正証書などを作成しましょう!養育費保証サービスを利用しましょう!しっかり養育費が受け取れるようにしましょう!ということなので、ぜひ、こうした制度を利用して、公正証書を作成したり、養育費保証サービスを契約しましょう!

特に札幌市にお住まいの方は、今のところ北海道では札幌市しか受けられない支援なので、積極的に利用すると良いと思います。

公正証書の作成をお考えの方は、ぜひ一度、ご相談くださいね。LINEやメールでいつでも受け付けています。

 

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